~ ZeO ~
とある将にONMITSUとして仕えながら、新たな忍者を育ててきた世生<ZeO>だったが、ONMITSUとして由縁なき人を殺めることに疲れ、真の強さを求めて一人山に入る。
風を感じ、光を浴び、鳥のさえずりの邪魔にならぬよう走りながら、彼は世界が生まれ変わったようだと感じ、自らの名前を「世生(ぜお)」と改名。
術の精度を高めていくことよりも精神鍛練に重きを置き、一人森の中で修業を重ねる。
あるとき、かつてともに闘っていた旧友が世生を訪ねてきた。
手に持っていたのは鎧兜の一部「草摺(すなずり)」。
かつて仕えていた将から、戻ってきてほしいとの伝言を預かってきたという。
「今度はONMITSUじゃなくて、SAMURAIとして雇いたいらしいぞ」
「ふっ。ばかな。 同じことだ」
しかし気になるのは世生が育ててきた弟子たちのこと。
気がつけば十年以上の時が経っていた。
かつての友は語る。
「時代は変わった。時代が変わると正義も変わる。
そして我々が闘う悪の形も変わってきた。
私は明日、ある鬼姫との闘いに出るつもりだ。
勝算ははっきり言って・・・・・ない」
世生は何も言わない。
これまでも死合いを切りぬけてきた同士だ。珍しい話ではない。
「私にも5歳になる娘がいてな。
まぁ、一人娘なのだがこれがもう可愛くて・・・」
古くから一子相伝の技を伝えてきた彩賀流の師範であるその友は、
一人娘を忍者にするつもりはないという。
「しかし私のエゴでこの彩賀流を終わらせるのはご先祖様に申し訳がたたない。
というわけで世生。こうやっておまえに頼みごとをするためにやってきた」
彩賀流に古くから伝わる巻物を預かってほしいという。
「世生が認めた男・・・・いや、女でもいいのだが・・・いつかそんな奴が現れたら、
そのときにすべてのことを話してこの巻物を渡してほしいんだ。新たな伝承者として」
なんならおまえが受け継ぐか?と笑って投げかける友の冗談を受け流し、その巻物を預かることにした世生。
「ところでどこにあるのだ?その巻物は」
「人に見つかるといけないからな。その草摺(すなずり)に隠しておいたさ」
鎧兜の垂れ、草摺り。 なるほど。これをずっと身に付けろということか。
これを受け取ったということは、かつての将とも縁を切れないということだ。
うまく考えたな。
この先、師匠なき彩賀流忍者たちが修行の道に迷ったとき、山を下りて彼らを導いてくれないかと
友が乞う。
「では、そのときまでに笛をひとつこしらえておこう。
その笛は正しい心で使いさえすれば千里響くといわれる笛だ。
彩賀流忍者の一番若い忍者にひとりで取りに来いと伝えてくれ」
一晩酒を酌み交わし、そして旧友は山を下りて行った。
静かな別れだった。
そして生まれた世笛(ぜてき)。
その笛を真っ赤な子忍者が受け取りにやってきたのは、それからさらに十数年後のこととなる。
Posted by 池野整体療術所院長 池野昌利 at 11:03│Comments(0)
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